競馬のレコードタイム
本日行われたG1ヴィクトリアマイル。
舞台は東京競馬場芝1600m。
単勝1.4倍の圧倒的支持を集めた"現役最強馬"アーモンドアイが直線残り400mくらいから軽く追い始めると、1頭だけ別次元の脚でいとも簡単に突き抜けた。
アーモンドアイと言えば、競馬を知らない人でも名前を聞いたことがあるレベルのスターホース。
これまでの実績から考えればこれくらいは当然の結果だったのかもしれないが、その走りを目の当たりにして改めて強さを思い知った。
そんな華々しい活躍をした馬の裏で、このレースに"1600m日本レコード保持馬"が出走していたのをご存知だろうか。
7枠13番トロワゼトワル。
現在の東京競馬場は高速馬場で前残り傾向であることから目を付けた人もいるかもしれないが、単勝123.8倍の12番人気、見向きもされなかったと言っても過言ではない。
昨年9月8日に行われた京成杯オータムハンデ。
中山競馬場芝1600mのコースをトロワゼトワルは1分30.3秒で駆け抜けた。
今日のヴィクトリアマイルの時計が1分30.6秒。
あんなに強かったアーモンドアイよりも早い時計で走っているのだ。
思えば競馬におけるレコードタイムというものは、他の競技と比べるとさほど重視されない。
陸上でも水泳でも、"レコード保持者"となれば選手としてこの上ない栄誉のはずだ。
競技の歴史に名前が記され、(少なくとも塗り替えられるまでは)後世へと語り継がれていくものであろう。
一方で競馬では、大きなレースにおける活躍は他の競技と相応の価値があるが、レコードタイム自体には大した価値はない。
馬場状態や展開等その時の条件による影響が大きいこと、その他にも理由はあると思うが、とにかくレコードタイムが話題になることは少ない。
JRAのホームページで距離別のレコード一覧を眺めてみると、必ずしも歴史的名馬がレコードを持っているわけではないことが分かる。
アーモンドアイの芝2400mやクロフネのダート1600m等、伝説的な記録は確かにある。しかしながら、ここに記されているレースを全てパッと思い浮かべることのできる人はよほどのマニアだろう。
競馬のレコードは結構簡単に塗り替えられるし、それも大きなレースでとは限らない。
重賞以外のレースで塗り替えられることもある。
それ故の注目度の低さだ。
陸上や水泳では"レコード保持"が強さの証明になる。
だから価値も注目度も高い。
しかし競馬では強さの証明にはならない。(一定の能力がある証明にはなるが。)
最も早い時計で走った馬が最も強いわけではない。
その事実にどこか寂しさを感じる。
今日のトロワゼトワルはゲートを出て先頭に立つと直線半ばまで粘りこむも、アーモンドアイとその他2頭に交わされて4着。
負けはしたものの、低評価を覆す見せ場十分の果敢な逃げは"日本レコード保持馬"としての意地だろうか。
"レコード保持馬"には強くあって欲しいものだ。